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ヨガの道しるべ ~ アーサナだけでは物足りない人のために ~

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ヨーガスートラ・その5 第1章9~10節

ヨーガスートラの原文はインド古語(サンスクリット語)で、その訳文もいろいろあります。ここでは、下記の4冊の訳文を参考にしながら、読み解いていきます。

参考書籍(番号①~④が書籍と訳文の対応を示します)
①やさしく学ぶYOGA哲学 ヨーガスートラ(向井田みお著)
②解説ヨーガ・スートラ(佐保田鶴治著)
③インテグラル・ヨーガ パタンジャリのヨーガ・スートラ(スワミ・サッチダーナンダ著)
④現代人のためのヨーガ・スートラ(グレゴール・メーレ著)

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【ヨーガスートラ:1章9節】

①言葉だけの考えはあるけれど、実体がないものがヴィカルパ(想像、迷い)です。
②分別知とは、言葉の上だけの知識に基づいていて、客観的対象を欠く判断のことである。
③(基盤となる)実体がなく、単にことばだけを聞いて生ずる心象は、ことばによる錯覚である。
④概念化とは、言葉だけによる知識であり、対象は存在しない。

ポイント1
マインドの5つの働き「①正しい認識、②誤った認識、③(言葉による)概念や想像、④睡眠、⑤記憶」のうち、「③(言葉による)概念や想像=ヴィカルパ」についての説明です。

ポイント2
実際には存在していなくても、言葉で理解して想像する。それがヴィカルパ。そんなの当たり前のことで、大したことないと思うかもしれません。でもここで注目してほしいのは、単に想像することとは言わずに、「言葉に基づいて想像する」というところ。言葉を持たない生き物は、ヴィカルパを働かせることができません。言葉があるからこそ、人は現実に存在していないものを想像して、新たな物事を創造することができるのです。

ポイント3
世界的ベストセラーの「サピエンス全史」の中で、人類を人類たらしめている大きな能力の一つが「虚構を信じる力」であることが述べられています。それはまさにヴィカルパのこと。ヴィカルパの働きがあるからこそ、今の人類の営みがあるのです。

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【ヨーガスートラ:1章10節】

①特別な認識を映さず、タマス(鈍い状態)に基づいたヴルッティ(考えの動き)がニッドラー(眠り)です。
②睡眠とは、「空無」を対象とする、心のはたらきのことである。
③無を把握の対象として成り立つ心の作用が、睡眠である。
④深い睡眠とは、目覚めた状態も夢を見る状態も否定された心のはたらきである。

ポイント1
マインドの5つの働き「①正しい認識、②誤った認識、③(言葉による)概念や想像、④睡眠、⑤記憶」のうち、「④睡眠=ニドラー」についての説明です。

「ニドラー=深い睡眠」と訳するのが一般的で、上にあげたすべての訳を簡単にまとめると「夢すら見ないくらい深い睡眠がニドラーである」ということでしょう。

ポイント2
しかしながら、「ニドラー=深い睡眠」という観念にとらわれずに、このスートラをニドラーの説明として素直に読むと、全然違う訳が見えてきます。

スートラの文言を素直に訳すと「想念がない、依存している状態、それがニドラー」という感じです。だとすると、ニドラーとは「我を忘れて、パチンコやゲームに夢中になっているとき」や「ぼーっとしているとき」のような「放心状態」が該当するように思えます。

もともと、ニドラーという語には、怠惰という意味もあり、心の5つの働きの一つであるニドラーは、睡眠ではなく、「放心状態」のことを指しているのかもしれません。

今後、ヨーガスートラを読み進めていくにしたがって、理解が変わるかもしれませんが、とりあえずここからは、心の4番目の働きのニドラーは「放心状態」として読み進めていくことにします。

ポイント3
1章7節から11節まで、心の5つの作用の説明ですが、忘れてはいけないのは、これらはすべて止滅させていくべき対象であるということ。心の作用(=マインドの働き)を無くしていくのがヨガであり、ニドラーも止滅させていくべき対象なのです。


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【ここまでのまとめ(ボディ、マインド、スピリットの視点での訳)】

1章1節:これから、ヨガの解説をする。

1章2節:マインドの働きを抑えていくのがヨガである。

1章3節:それができると、スピリットが本来の状態になる。

1章4節:普段は、スピリットとマインドが一体化して、区別がつかなくなっている。

1章5節:マインドの働きには、5種類あり、それらは人を悩み苦しませたり、そうでなかったりする。

1章6節:マインドの5つの働きとは「①正しい認識、②誤った認識、③(言葉による)概念や想像、④放心状態、⑤記憶」である。

1章7節:正しい認識には「①自分の経験に基づき、その経験から直接分かったこと、②経験から類推して分かったこと、③経験に基づいたものではなく、本などから学んだこと」の3種類がある。

1章8節:誤った認識とは、何かを誤って解釈したことによる、正しくない理解である。

1章9節:実際には存在していなくても、言葉で理解して想像する。それがヴィカルパ。すわわち、言葉による概念や想像である。

1章10節:ニドラー(放心状態)は、何かに依存していて、想念が生まれない状態である。























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# by yoga-freestyle | 2021-01-04 14:12 | ☆ヨーガスートラ(更新中)☆
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大阪&京都でヨガのインストラクターをしている林真一です。ヨガ的な生き方について、いろんな視点からお伝えしていきます♪


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